[編集者注] 以下の亡命宣言文は、2024年12月12日午後3時(米国現地時間)、米国移民局LA支部の前で行われたビョン・ヒジェ代表の米国政府亡命申請記者会見で発表されたものです。 |
[ 邊熙宰(ビョン・ヒジェ)· メディアウォッチ代表理事 ]
2024年12月3日午後11時(韓国時間)、尹錫悦大統領は全国に非常戒厳令を宣言し、軍が国会および選挙管理委員会を掌握した。大韓民国の歴史において、軍が実権を握っていた1980年5月17日に「全国非常戒厳令」が拡大され、多くの犠牲者を生んだ光州事件以来、実に44年ぶりのことである。
世界中の指導者の支持率を調査する「モーニング・コンサルト (Morning Consult)」によると、尹錫悦大統領の支持率はすでに15%台と、最下位を記録している状況だった。このような中、尹大統領は自身に対する特別検察法案を頻繁に提出する国会を無力化するとともに、2024年4月の総選挙での惨敗結果を覆すべく、選挙管理委員会の資料を操作するという陰謀を企てたのだ。
米国や国際社会にとって、産業化と民主化を成功させた大韓民国で、一国の大統領がこのような工作を仕掛けるという事実は、理解しがたいかもしれない。しかし、現職の尹錫悦大統領は、検事時代に朴槿恵、李明博、梁承泰など保守派の元大統領や元大法院長を無数の捏造捜査を通じて拘束し、当時の文在寅大統領の支援を受けて出世した人物であることを直視する必要がある。
尹大統領の時代錯誤的な親衛軍事クーデターは、国民の強力な抵抗によって速やかに鎮圧された。しかし、現在、尹大統領は自らの最側近であり、検察官時代に捏造捜査を共に行った共犯者でもある韓東勲、与党「国民の力」代表に権力を不法的に移譲し、新たな政治工作を計画している。
2018年5月27日、本人は文在寅政権の下、尹錫悦ソウル中央地検長と韓東勲ソウル中央地検3次長によって、OECD主要国のジャーナリストの中で初めて、名誉毀損罪で裁判を経ることなく事前拘束された。これは、朴槿恵弾劾の「スモーキングガン」であったタブレット端末が、朴槿恵の私的側近である崔瑞元のものではなく、実際には朴槿恵大統領府の金漢洙ニューメディア室上級行政官のものであると主張したことが理由だった。
朴槿恵弾劾の決定的な理由は、2016年10月24日JTBC放送社の特ダネ報道によるもので、この特ダネ報道の内容は、「民間人」崔瑞元がタブレット端末を利用して朴槿恵から200余りの大統領府機密文書を不法に受け取ったというものだった。 したがって、このタブレット端末がもし大統領府職員である金漢洙のものであれば、朴槿恵弾劾は無効となるしかない。
本人は約1年余りの獄中生活後、2019年5月17日に保釈された。投獄中の裁判過程で、タブレットが崔瑞元のものであるというJTBC放送社の特ダネ報道が単なる誤報ではないことを認識するようになった。尹錫悦と韓東勳が主導的に参加した朴槿恵政権の国政農団捜査のために創設された特別検察で、タブレットが崔瑞元のものであると見せかけるため、証拠を捏造したことを確保し始めたのだ。
いわば、尹錫悦と韓東勳は、自らが特別検察時代に犯した犯罪を隠蔽するため、それを明らかにしようとした現職のジャーナリストである本人を、ソウル中央地検の地検長と3次長という地位を利用して拘束したのだ。結局、本人は2022年12月、尹錫悦のタブレット捏造を完全に証明し、尹錫悦と韓東勳を証拠隠滅罪で高官公職者犯罪捜査処に告発するに至った。
しかし、この時点で尹錫悦と韓東勳は、すでにそれぞれ大韓民国の大統領と法務長官に就任していた。高級公職者犯罪捜査処は、現在までこの事件について公式な捜査を開始すらしていない。一方、JTBC放送社の告訴により始まり、本人が事前拘束までされた名誉毀損罪裁判の控訴審は、今年から重要な証人尋問と証拠調査を無差別に却下したのみならず、本人に対する2次拘束を試み始めた。
本人に対する2度目の拘束が行われれば、韓国の大統領と法務長官出身の与党代表の重罪が完全に埋もれてしまう可能性があると判断し、9月28日、結婚直後の新婚旅行で米ロサンゼルスに入国した。本人の出国禁止措置が解除されていたため可能であった。後に調べると、法務部側の行政ミスで、担当者が叱責されたことを知った。本人と一緒に裁判を受けている弊社の他の記者三人はまだ出国禁止の状態にある。
尹錫悦政権は本人への弾圧にとどまらず、他のジャーナリストにも圧力をかけている。検事時代、尹錫悦の不正に関する録音を公開した「ニュースタパ」のシン・ハクリム記者は事前拘束された。また、尹錫悦と韓東勳の不適切な飲み会を報じた「ニュータムサ」のカン・ジング記者も、政権の検察によって二度にわたり拘束令状が請求される事態に至った。幸いにも拘束は免れたが、カン記者は現在、法務長官時代に韓東勳が提起した民事・刑事告訴により裁判を受けざるを得ない状況にある。さらに、尹錫悦の妻、金建希の不正を暴露してきた「ソウルの声」も、政権の検察から各種押収捜査や告訴に悩まされている。1987年の韓国の民主化以降、左右を問わず、これほどまでに検察を動員してメディアを弾圧した政権は前例がない。
尹錫悦政権を批判し、牽制すべき立場にある野党の「共に民主党」もまた、検察による圧力に直面している。大統領選挙で尹錫悦と対決し、わずか0.8%差で敗北した李在明は、500件以上の押収捜査を受け、現在18件の容疑で5つの裁判を受けている。そのうち、公職選挙法違反に関しては懲役1年の有罪判決を受けており、これが大法院で確定すれば、李在明は10年間の政治活動禁止に追い込まれることになる。
大統領選挙当時、李在明氏を物心両面で支援した宋永吉元民主党代表は、現在、検察の違法な別件捜査に悩まされている。4年前に党代表選挙を行った際、宋代表の選挙運動員が活動費を配ったことを検察は問題視している。宋永吉前代表は、そのような事実があったことすら知らなかったと抗弁したが、事前拘束され、後に保釈された。来年1月8日に1審判決を待っている。この事件で、民主党議員のうち、なんと20人もの国会議員が司法処理を待っている。やはり、1987年の民主化以降、大統領選挙の勝者が敗者をこれほど悪質に弾圧した事例はない。
米国の政治メディア「ポリティコ(POLITICO)」は、韓国の尹錫悦政権による野党弾圧が、まるで米国のバイデン政権がトランプ大統領に対して無差別捜査と起訴で攻撃した点と非常に似ていると評価した。米国の韓国系政治・市民団体では、検察出身の尹錫悦がバイデンに検察と法務省を動員してライバルを排除するようにアドバイスしたのではないかと確信している。米国でも大統領選挙の勝者が敗者をこれほど全面的に捜査した前例はないからだ。
本人が掘り下げてきた尹錫悦と韓東勳の証拠捏造犯罪問題、そして亡命のための米国入国に関するニュースは、産経新聞の英語版ジャパン・フォワード、日本の有力週刊誌「週刊ポスト」、香港の「亜細亜週刊」や「アジアタイムズ」、カナダの「ザ・ポストスティール・マガジン」などで報道され続けている。一方、韓国の主要メディアであるKBS、MBC、朝鮮日報、東亜日報、中央日報などは一切報道していない。これらのメディアは、朴槿恵弾劾当時から尹錫悦と韓東勳の捏造捜査を隠蔽してきた共犯者であり、その他のメディアも無慈悲な尹錫悦政権下の検察による弾圧を恐れ、尹錫悦と韓東勳の犯罪や私の亡命に関する記事を書く勇気を持たないのだ。
崔瑞元側のイ・ドンファン弁護士は、2022年12月に尹錫悦と韓東勳が朴槿恵弾劾のためにタブレットを崔瑞元のものであるかのように捏造したという内容のサイバーフォレンジック専門家協会(KCFAP)の鑑定結果を発表する記者会見を開いた。この記者会見には、聯合ニュース、SBS、YTN、MBNなど30を超えるメディアの記者が取材に来たが、驚くべきことに一社も記事を掲載しなかった。
不思議なことに、少しでも自分たちを批判すれば無差別告発を通じてジャーナリストを沈黙してきた尹錫悦と韓東勳は、自分たちを大っぴらに犯罪者と称している本人に対して、直接的な法的措置を取っていない。彼らの犯罪行為を正確に摘発したため、万が一、裁判などを通じて自分たちの犯罪が公論化されることを避けたいのでだろう。代わりに尹錫悦と韓東勳は、自分たちとタブレット証拠捏造の共犯関係にあるJTBC放送社とSKテレコムに圧力をかけ、本人を告発させ、二次拘束を狙っている。
尹錫悦政権とバイデン政権は、同じ手法で野党勢力を弾圧してきた。また、尹錫悦政権は奇妙なほどバイデン政権と連携し、ロシアとウクライナ間の戦争に介入し、その影響を拡大させている。尹錫悦と金建希をつないだ三扶土建会長の趙南浩は、最近、ウクライナ復興事業への参加を表明し、その結果、株価が大幅に上昇した。韓国では、尹錫悦と金建希がウクライナでゼレンスキーと一緒に利権事業に手を出しているとの噂が広まっている。実際、金建希は韓国で株価操作の疑いをかけられ、国内の高速道路事業にも介入し、暴利を得ようとした疑惑が続々と明らかになっている。
本人は、尹錫悦と韓東勳が怖くてアメリカに逃げるために亡命を申請するのではない。韓国では到底、尹錫悦と韓東勳の暴政を阻止する方法がないため、アメリカと国際社会に彼らの犯罪を暴露するために亡命を申請するのだ。最近、尹錫悦が非常戒厳令による親衛隊クーデターに失敗し、政治的危機に陥ったが、自分の捏造捜査の共犯者である韓東勳に不法的に権力を移譲しようとしている。また、彼らと捏造捜査に加わった検察集団は依然として健在である。
米国は、朴正煕政権の人権弾圧と権力汚職に関連してフレイザー公聴会を開き、元韓国中央情報部長のキム・ヒョンウクなどを証人として調査したことがある。私は、米国政府に私の亡命をできるだけ早く受け入れてもらうことを求めるとともに、米上下両院に尹錫悦政権のマスコミおよび野党弾圧、さらにウクライナ戦争拡大の試みなどの不正行為を調査するよう要請する。
米国のインド太平洋および北東アジア政策において、韓国は米国の最も重要なパートナーである。特に、ウクライナ戦争を早期に終結させ、北朝鮮の非核化と開放化を推進することは、トランプ政権の核心政策であった。
尹錫悦はすでに検事時代に、国民が選んだ大統領である朴槿恵を捜査する際、証拠を捏造して不法に弾劾させる役割を果たした。尹錫悦はこのような犯罪を隠蔽するため、無差別にマスコミと野党を弾圧している。また、ロシアとウクライナ間の戦争を利用して私的な暴利を得ようとしており、保守勢力の支持を得るために北朝鮮との緊張と葛藤も高めている。このような尹錫悦が韓国の大統領である限り、トランプ政権の目標が達成されることは不可能だ。政権延長のために第2、第3の軍事戒厳令を宣言する可能性もある。
本人は、在韓米軍第2師団で米軍を支援するカチュサ(KATUSA)で軍曹として勤務した経験がある。また、韓米同盟を強調する保守派の政治路線を歩み、2016年からはトランプ氏を支持してきた。2018年には、尹錫悦によって投獄された際、エドワード・ロイス米国下院外交委員長からヤングリーダーシップ賞を授与されたこともある。さらに、ゴードン・チャン、タラ・オ、スーザン・ソルティ、グレッグ・スカラテューをはじめとする米保守系知識人20人以上が、私の釈放を求める声明を発表したこともある。
米国に対して改めて要請する。米国で言論の自由を享受し生活する権利と、米上下院の公聴会で尹錫悦の犯罪と言論弾圧、野党弾圧の現実を説明する機会を与えてほしい。