(2024年 8月 15日) 朴槿恵大統領弾劾の決定的な理由となったドレスデン演説文の流出が、国立科学捜査研究院の鑑定資料を通じ、虚偽であることが明らかになった。朴前大統領の公務上秘密漏洩罪の有罪判決はもちろん、憲法裁判所での大統領罷免判決についても再審の道が確実に開かれたとの評価が出る。
14日、メディアウォッチは被告人としてタブレット名誉毀損控訴審裁判所に意見書を提出し、「崔順実タブレット」に関連する国科捜鑑定資料(2017年11月21日付)を詳細に引用、JTBC放送社と検察側が主張してきたチェ・ソウォン(改名前の崔順実)がタブレットを通じてドレスデン演説文を閲覧及び修正したとしたという事実は、全て虚偽であることを明らかにしたと伝えた。
朴槿恵大統領の弾劾の核心理由はドレスデン演説文流出問題
JTBC放送社の「国政壟断」スクープ報道の中で最も決定的な内容は、2014年3月にあった当時朴槿恵大統領のドイツ・ドレスデン演説「韓半島統一のための構想」と関連したものだった。JTBC放送社は、崔順実が大統領の演説前日に極秘事項である演説文をタブレットを通じて閲覧し、内容の修正まで関与したと報道した。
検察は、このJTBC社の「崔順実タブレット」報道を既定事実として捜査・起訴し、裁判所も関連裁判で朴前大統領に公務上秘密漏洩罪の有罪判決を下した。憲法裁判所もまた、大統領罷免の第一の理由として演説文流出問題を挙げた。大統領の演説文は国家の外交・安全保障問題に影響を及ぼす可能性がある重大な文書で、民間人にこれを事前流出させ、国政介入を許可したこと自体、大統領に憲法を守る意志がないと結論付けたのだ。
裁判所と憲法裁判所の判断は、崔順実が「崔順実タブレット」を通じてドレスデン演説文を閲覧し、修正したかどうかの正当性がかかっていると言っても過言ではない。これが虚偽であることが判明すれば、当然、朴前大統領側としては再審の名分を持つことになる。
メディアウォッチは、ドレスデン演説文流出に関する最新の取材が盛り込まれたタブレット名誉毀損控訴審意見書を通じて、「崔順実がこの事件のタブレットを通じてドレスデン演説文を閲覧し修正したというのは全く事実ではなく、明らかに虚偽」と断言した。
国科捜の鑑定資料で反証されているドレスデン演説文の流出問題
意見書でメディアウォッチは、「検察が主張するメディアウォッチに対する公訴事実の、『崔順実タブレット』を通じ崔順実が『ドレスデン演説文ファイル』を受け取って見た」、『ドレスデン演説文ファイル』はチョン・ホソン陳述などによって崔順実が実際に閲覧したことが確認された」という内容は、例えば検察が崔順実がタブレットで「ドレスデン演説文ファイル」を閲覧する場面が撮影された映像などを確保して証明した事実ではない」と断言した。
また、「検察が『崔順実タブレット』を通じ崔順実がドレスデン演説文ファイルを受け取って見た」という内容は、正確に言えば、当時崔順実が『崔順実タブレット』を使用したという前提に基づく検察側の『推論に過ぎない』」とし、 「この場合、崔順実が『崔順実タブレット』を通じドレスデン演説文ファイルを閲覧しなかったという『反対推論』も可能であり、反対推論がより合理的であれば、検察側の『推論』は却下されるべきである」と強調した。
メディアウォッチ側が崔順実のドレスデン演説文の閲覧・修正を否定するために提示した根拠は、過去の崔順実関連裁判(ソウル中央地裁2016高合1202)で裁判所に提出された、2017年11月21日付の国立科学捜査研究院の鑑定会報書(シム・ギュソン研究官作成)だ。
JTBCと検察、'ドレスデン演説文ファイル'ダウンロード記録を閲覧記録に捏造
国科捜鑑定書によると、確かに朴槿恵前大統領のドレスデン演説前日に「崔順実タブレット」でドレスデン演説文ファイルがダウンロードされた記録があるのは事実だ。しかし、問題は、ダウンロード記録ではなく、検察の起訴状にも記載されているファイルの「閲覧」記録がタブレットにあるかどうかだ。国科捜鑑定資料を確認した結果、ファイルの「閲覧」は崔順実ではなく、全てJTBC放送社と検察側によってのみ行われた。つまり、証拠毀損ないしは証拠捏造が発生したことになる。
メディアウォッチは、「確かなことは、不詳の『崔順実タブレットユーザー』がドレスデン演説文ファイルが添付された電子メールを受信し、当ファイルをダウンロードした事実までは国科捜が公式に確認したが、崔順実は言うまでもなく、この不詳の崔順実タブレットユーザーがドレスデン演説文ファイルを閲覧したという事実は、国科捜も公式に確認したことが全くない」と強調した。
国科捜が確認したことのない内容にもかかわらず、JTBC放送社と検察は、国科捜の結論とは全く異なる事実をもとに報道と起訴を行った。不詳の崔順実タブレットユーザーによるドレスデン演説文ファイルのダウンロードを、崔順実によるドレスデン演説文ファイルの閲覧と入れ替え報道と起訴を行ったのだ。メディアウォッチは、これは明確な捏造報道、捏造起訴と見なすしかないと断言した。
「崔順実タブレットユーザー」は「ドレスデン演説文ファイル」修正に関与していない
崔順実によるドレスデン演説文ファイル修正問題は、閲覧問題とは異なり、検察のメディアウォッチに対する公訴事実にも入っていない。演説文修正の有無については、根拠がないことを検察も認めているのだ。
国科捜鑑定資料によると、「崔順実タブレット」にはそもそも文書修正プログラムがない。 また、オンライン上のアプリで文書修正作業をした痕跡もやはり見つからなかった。
「ドレスデン演説文ファイル」は、朴槿恵前大統領の側近または政府関係者が掲示板のように活用する共有アカウント(kimpa2014@gmail.com)に上がっていたものだ。国科捜が提供した関連共有アカウントのメール履歴資料によると、「ドレスデン演説文ファイル」は朴大統領のドレスデン演説前日にアップされ、2時間余りのあいだ関連メールが送受信され、この共有アカウントで演説文の修正を主導する者によって何度も修正が行われた。
問題は、「崔順実タブレット」機器には、変更された内容が入った「ドレスデン演説文修正版ファイル」の閲覧記録はおろか、ダウンロード記録すらないということだ。国科捜鑑定書をもとにメディアウォッチは、不詳の「崔順実タブレットユーザー」は共有アカウントにアップロードされた「ドレスデン演説文修正ファイル」がどのように修正されたかについて全く関心を払わなかったと結論付けた。
メディアウォッチは、この不詳の「崔順実タブレット使用者」は、タブレットの開通者であるキム・ハンス元青瓦台行政官であるに違いないと断言した。キム・ハンス元行政官は、青瓦台職員として在籍中の2014年3月27~28日、当時朴槿恵大統領のドレスデン訪問に同行した可能性が高い。青瓦台で広報を担当していたため、共有アカウント(kimpa2014@gmail.com)の参加者としての資格はあるが、スピーチの修正には直接関与しなかったと考えられる。
ドレスデン演説文の記録は「崔順実タブレット使用者」がキム・ハンスであることを暗示している
メディアウォッチは、崔順実がドレスデン演説文ファイルの修正に関与したというのは、(1)「崔順実」と(2)「崔順実タブレットユーザー」、そして(3)「共有アカウント(kimpa2014@gmail.com)でドレスデン演説文の修正を主導した者」が同一人物であるという前提に基づいているが、(1)=(2)は別として、(2)=(3)もやはり証明されていないと言い切った。
さらに、メディアウォッチは、(1)=(2)が虚偽であることも、L字ロックパターンの初期設定時点の問題、タブレットの開通契約書問題をはじめ、様々な根拠をもとにすでに確認されたと伝えた。
メディアウォッチは、「既存の国科捜鑑定資料を通じて新たに明らかになった『崔順実タブレット』のドレスデン演説文ファイル問題に関する事実関係は、朴槿恵前大統領の公務上秘密漏洩罪の有罪判決はもちろん、憲法裁判所の前大統領に対する弾劾についても、再審事由となることは避けられない」とし、「被告人側であるメディアウォッチの無罪事由になるのも当然だ」と結論付けた。
朴槿恵前大統領、弾劾関連再審の道は確実に開かれる
メディアウォッチは、「被告人側が裁判所に是正の機会を与えるという言葉は奇妙に聞こえるかもしれないが、このような重大な裁判では、まったく無理はことではない」と確信を示した。その上で、証拠調査の再開はもちろん、2017年11月21日付の国科捜鑑定書を作成したシム・ギュソン研究官に対する証人採択を改めて裁判所に要請した。
一方、タブレット名誉毀損控訴審裁判部は、8月22日午後3時30分、ソウル中央地裁西館422号法廷で一回延期された第13回公判を開く予定だ。